■第10号 序章最終回 (2005年05月08日) 序章の最終回になります。今回も、よろしくお願いいたします。 お腹が痛いとか頭が痛いといえば痛み止めを飲み、ガンになれば抗ガン剤というふうに、今の医療現場は、薬が万能になっています。 ガンには免疫が大切だと言いながら、自分がガンになると、免疫力を抑制する抗ガン剤を疑いもせず服用してしまう、というような、おかしなことが起こっています。
安保教授は、こうした矛盾に対し、知識からの判断ではなく、私たちが本来持っている生き物としての危機意識からの判断が必要ではないかと言われています。つまり、生物の活動や、その身体の中で起こる反応(生体反応)をとらえなおし、治療を考えようとしておられます。
そこで、もっと重視しなければならないのが、心の問題ということになります。 例えば、ある人が、やたらに無理をしたり、やたらに楽な生き方をして、病気になっているということは、その病気の原因が、そういう行動をするように仕向けた心のあり方につながっているといえます。そうであれば、適切な心構えを持ち、それを反映した日常生活を送ることで健康になれるということになります。つまり、心の破綻が身体の破綻をきたすということです。
生物は、自然の摂理に沿って、そこからはみださないような思考方法に基づいた生き方をすると、最も調和的に生きられるのではないか、ということです。人間も環境に適応しつつ、色々な能力を身につけて来ていますが、適応してきた以上の極端な生き方をすると、身体のシステムが破綻し、病気になってしまいます。 このとき、単に破綻を来すだけでなく、破綻を来した個体を最後に自ら死滅させようという働きが、私たちの生体の中にあって、それが、「細胞の自殺」として知られている、アポトーシスという現象(分かりやすい例では、昆虫の変態、植物の秋の落葉など)です。
白血球の中のマクロファージが免疫をつかさどる基本ですが、これが、アポトーシス現象の担い手です。マクロファージは骨を食べる破骨細胞で、骨の新陳代謝を促しますが、このほかにも、仕事を終えた赤血球を処理していることも知られています。 さらに、私たちが、環境や状況への適応に失敗して破綻を起こしたときに出る“やつれ”は、マクロファージが自分の宿っている身体そのものを食べて、適応できなかった自分の身を滅ぼそうという、生物本来のしくみを現すと考えられるのです。
私たちの細胞は、遺伝子のスイッチオンによって、特殊化されて働いているのですが、緊急事態になると特殊化が止まり、細胞がマクロファージに食べ尽くされて、自らを消滅させようとします。 細胞のレベルでさえ、自然から極端にはずれると自滅への道に向かうようにセットされており(アポトーシス)、それが、生物の基本的なプログラムのようです。 そして、そのプログラムをつかさどっているものが、マクロファージをはじめとする免疫だと、考えられるのです。ですから、免疫は、生命の維持と廃棄の両方に関わっているシステムといえます。 自然に従う生き方をして、免疫力を上げると体調が良くなり、病から逃れることができるということは、言い換えれば、免疫力こそ、生命力と言えるのかもしれません。
今回のまとめは、【免疫力こそ、生命力】ということになるでしょうか。やっと長い序章が終わりました。次回から、第6章「健康も病気も、全て生き方にかかっている」についてです。序章と重複するところがあるかもしれませんが、それは、それだけ重要である、というふうにお考えください。では次号まで、楽しくお過ごしください。(^‐^) |