■第7号 サイレント・ベイビー症候群の治療 (2005年12月19日) 今回より、一気に最終章へ飛び、サイレント・ベイビー症候群の治療についての概要について述べていきます。例のごとく、他章の内容や詳細については、原文をお読み下さい。 当時(1998年)の母子保健の専門家の方々の強い関心は、「心と社会」の問題に集まっていました。例えば、拒食症、過食症といった、自己の生命の維持を否定するような行動をとる子どもや、不登校、学級破壊、いじめ、家庭内暴力、非行などの社会性や他人との人間的な関係性が壊れてしまっているとしか考えられない行動をとる子どもたちが急激に増加している、というような問題です。これらは、当時と比べ、表面的には取り上げられることが少なくなった蟹思えますが、今なお、同様の問題をはらんでいるのではないかと思います。 こうした問題が起こる原因は、管理社会の進行が子どもたちの心を壊しているとか、古い形の家庭の崩壊が進んでいるからだとか、テレビ、インターネットを通じた刺激的な情報のせいだとか考えられます。しかし、母子保健の専門家の方々は、最も根本的な原因は、「親と子の関係性の崩壊」にあると考えておられるようです。 サイレント・ベイビーは、お母さんとの間の愛着形成ができなかったために、“生きる”ということに対する違和感あるいは非現実感が生じて、肯定的な気持が育ちません。現実を強く実感できないために、積極的により良く生きようとする意思が希薄になり、「感情の脳」、「生命力の脳」が充分に発達しせず、機能しないのです。ですから、人との関係を育てることが下手な人間に成長するのです。それは、取りも直さず、ストレス耐性が弱いということで、心が不安定で、心理的、情緒的にもろい人間に成長してしまうのです。だから、強いストレスにさらされると、いとも簡単にキレてしまうことになりかねないのです。 ただ、テレビ、インターネットをはじめとする知識や情報を入手する手段が極度に発達しているため、本音の部分が育たないのに、自己をコントロールしようとする建前だけが背伸びすることになります。 ところで、心理学者は、心がキズつき、そのキズが原因となって病的な行動が生まれる場合、すぐに行動に移されるのではなく、一定の“潜伏期間”を経て、現実的な行動に移ることが多いと、言っています。ですから、少年期の家庭内暴力の原因が、乳児期に受けた心のキズにあるということが起こるのです。潜伏期間がある故に、子どもがなぜ家庭内暴力を振るうのか、親には理解できないのです。 こうした爆発は、いつか、何かのきっかけで起こります。そして、一度経験すると、爆発を乗り越えられるのです。一般的な意味での爆発の時期で最も多いのは、思春期でのホルモン分泌の激変によるものです。ですから、思春期の爆発は、必要なやむを得ないことと考えるべきかもしれません。しかし、この時期に爆発を経験していないと、初老期のホルモン分泌の変化時期に爆発が起こり、悪くすれば、初老期鬱病などになります。初老期に自殺が多いのは、その影響だと考えられます。 そういった意味では、爆発の時期は、早ければ早い方が良い。できれば、第1次反抗期(1〜3歳)に存分に爆発させておくのが望ましいでしょう。ただ、そのためには、サイレント・チルドレンであっては爆発させられないのです。なぜなら、幼児期の「イヤダー」という爆発は、自分を受け入れ、保護してくれる相手に向けられるからなのです。 サイレント・チルドレンの根は深いですね。初老期の鬱にまで影響しかねないのですから。 それでは、次回まで、健康で、楽しくお過ごしください。(^‐^) |