■第9号 最終回 (2006年01月08日) サイレント・ベイビーを癒す一つの方法に「カンガルー・ケア」があります。この「カンガルー・ケア」というのは、カンガルーが子育てするように、オムツだけの裸の乳児を、お母さんの裸の胸にダッコして育てるケアです。 元々は、未熟児のために考えられた手段なのですが、この育児法が、未熟児を生んでしまったお母さんの「自分は欠陥のある母親である」という気持を和らげ、母性を育てると共に、子どもの心に、安心感、安全感を培う働きがあることがわかりました。 そういうことがわかって、日本でも平成6年頃から、未熟児の育児に試みられるようになりました。 ところで、未熟児というのは、脳の神経回路が充分に発達しないうちに生まれてくるようです。ですから、早くから、母親に包み困れ、保護されることなく、不適切で過剰な刺激にさらされるために、多動や学習障害をかかえる未熟児もあるようです。 サイレント・ベイビーも、脳の神経回路の発達が不充分で、特に感情脳の発達が不充分なのですが、「カンガルー・ケア」によって、感情脳をはじめとする脳の神経回路が良い刺激を受けて、発達すると考えられ、サイレント・ベイビーを癒す方法として期待が寄せられています。 ダッコするという療法は、母子間の胎内コミュニケーションのやり直しを意味しています。つまり、人間は、言葉だけでコミュニケーションしているのではなく、身体レベル、情動レベル、感覚レベルのコミュニケーションがなければ充分とはいえず、また、確固としたアイデンティティも培われないのです。 そして、人間が初めてこの身体レベルのコミュニケーションを学ぶところが胎内なのです。ですから、「カンガルー・ケア」によって、お母さんとの身体レベルでの共振を追体験することによって、成長過程をやり直すのです。 しかし、「カンガルー・ケア」も当然のことながら万能ではありません。うまくいかないこともあります。例えば、不登校から抜け出ることができないなどがあります。その場合、反社会的なあるいは過度に暴力的な方向でなくて、自分が熱中でき、生きがいを感じ、依存できる方向に生きる場を探し、自分を成長させること、そして、周りの人はそれを受け入れ、暖かいまなざしで見守ってあげることも、一つの方法です。 様々な人がいるように、癒す方法も多種多様で、一人ひとりにあった方法があるはずなのです。要は、どんな方法であっても、周囲との折り合いをつける方法を学び、身につけることです。 このシリーズも今回で終了しました。「三つ子の魂百まで」といわれます。少なくとも、3歳までは、お母さんとベッタリの親子関係が、人格形成に欠かせないのではないか、と思いました。 それでは、次回シリーズまで、健康で、楽しくお過ごしください。(^‐^) |