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私と健康・生きがい

■第12回 基礎を学んで北アルプスへ(2007年04月18日)
                                   健康生きがいづくりアドバイザー 井上 淳

 若いころから長い間、困っていたことがあります。それは「あなたのご趣味は?」と聞かれることでした。そんな時いつも読書とか音楽鑑賞・美術鑑賞などと答えていました。
 これらは好きなことは好きでしたが、心の中ではこれが本当に自分の趣味といえるのかと、自問自答の連続でした。趣味と公言できるほどの趣味もなく40年間は仕事仕事の毎日を過ごして定年を迎えました。
 私は第2次世界大戦の始まる1年前、県東北部の山村に生まれました。
 父が昭和20年春に戦死。家族は母と兄2人と妹の5人。わずかな田、畑、茶畑、山林がありました。学校へ行く朝はいつも母から、学校から帰ってきたらどこそこの田へ、畑へ、山へ手伝いに来るようにと言われました。
 勉強より野良仕事、山仕事の手伝いです。カバンを置いてすぐに行きました。それ以外の日々は飲み水を近くの井戸から運ぶ、いわゆる水くみ、風呂たき、庭掃除などなど、家の手伝いです。
 野良仕事は、草むしり、稲刈り、土を耕すなどなど、重い物でもよく運びました。山仕事は植林、しば刈り、まき割り、中でも急な斜面での手伝いは危険なものでした。暑い日も、寒い北風の吹く日も・・・・兄弟それぞれができることを手伝いました。
 在職中から定年後の日々の過ごし方について、考える機会を与えられましたが、確信をもってこうしようと言えるものを決められませんでした。
 定年後、再就職して、この課題は5年間、先送りとなりましたが、今度は真剣に考えざるを得ません。退職すると歩く機会も少なくなることから、まず健康維持には毎日歩くことと考えました。
 健康維持のため歩くことは大事ですが、それだけでは面白くありません。
 もう一つの目標を考えました。それは東海道五十三次(約500キロ)の京都・三条大橋からお江戸・日本橋までの宿場を歩くことです。これには毎月1回のツアーに参加することにしました。
 毎日自宅周辺を歩きながら、月1回旧東海道に沿って10数キロから20数キロずつ歩いて約2年間で完歩。
 これで歩くことの楽しさと歩けることの自信を得ました。
 妻は退職するまで職場の仲間とよく山へ行っていたようです。結婚後、山は楽しいから行こうと誘われましたが、そのとき「俺は山育ちだから、いまさら山へ登っても面白くない。行きたくないと・・・。」そう言って、一度も行きませんでした。
 それが59歳になって初めて妻と北アルプス・燕岳へのツアー登山に参加しました。登るときの苦しい思い、下山した後は筋肉痛。それよりも雲海に浮かぶご来迎、北アルプスの山々、満天の空にそびえる槍ヶ岳などなどを目にしての感動が強い思い出になっています。 
 それから6年、この感動と、東海道五十三次が完歩できたことで、歩くことの楽しさと歩けることの自信を得て、昨年から中高年の山歩き講座を受講、机上講座で知識、実践講座で基本技術、セルフレスキュー、雪山体験、岩登りなどの技術を身に付け、事故を起さない安全な山歩きの方法を学んでいます。
 毎回参加するのが楽しみで、今は山行が趣味ですと自信を持って言えます。
 この山行で気がついたのは子どものころの体験です。遊びたい気持を我慢し、手伝った体験が山歩きに自然と役に立っていることです。
 そして子供ごころに戻っては、冒険心や達成感、喜びを感じています。
 また、時間を見つけて近くにある老人福祉施設の庭の草取りなど、庭の手入れのボランテア活動をしています。これも子どものころの体験が生きています。土や草に触れる心地のよさが楽しみです。
 これらのことを考えるといまでは亡き母に感謝の気持でいっぱいです。(奈良日日新聞掲載)

 それでは、次回まで、楽しくお過ごしください。 (^‐^) 

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