■第2号 合成化学物質のホルモン分泌系への影響 (2006年01月23日) 前回にもお伝えしましたが、この書籍は、合成化学物質のホルモン分泌系への影響について言及した研究報告です。動物やヒトを対象にした初期研究では、精子数の減少、不妊症、生殖器異常、乳ガン・前立腺ガンなどホルモンに誘発されたガン、多動症、注意散漫など子どもに見られる神経障害、野生動物の発達及び生殖異常などの現象が問題視されています。 そこで、まず、上記でお伝えした実際の現象を簡単に書いていきましょう。 1.1952年、北米フロリダ湾岸に生息するハクトウワシの三分の二が、繁殖期に巣作りに関心を見せないばかりか、求愛行動すら見せなくなりました。そして、研究者は、「ハクトウワシの80%に、生殖能力がない」と断言したのです。 2.1950年代後半、当時イギリスの伝統であった「カワウソ狩り」ができなくなったのです。それは、カワウソが消え失せてしまったためなのです。その原因が、殺虫剤ジエルドリンにあるということが、1980年になって、明らかになりました。 3.1967年、アメリカ、ミシガン湖近辺で飼育されていたミンクの大半のメスが子を産まなくなり、まれに産まれた子は、すぐに死んでしまいました。研究者の調査で、エサとして与えられていた魚がPCBに汚染されていたことが突き止められました。 4.1970年、カナダオンタリオ湖、セグロカモメのコロニーでは、孵っていない卵や捨てられた巣が見つかりました。また、雛の80%が孵化する前にしんでいたのです。そして、死んだ雛鳥を調べると、グロテスクな奇形が見られました。ダイオキシンに暴露したニワトリの子孫に同じような奇形と衰弱が現れていたようですが、オンタリオ湖では、これを裏付ける証拠はまだ見つかっていませんでした。 5.1980年代、アメリカ、フロリダのアポプカ湖のアリゲーターの養殖で、孵化する卵は全体の18%で、しかも、孵化した子どもの半数が弱って、10日ほどで死んでしまいました。これは、近くの化学会社で殺虫剤が流出するという事故が起こった直後に、アリゲーターの90%が死滅したことと関係があるらしいのです。また、湖の水質が元に戻ったことが水質検査で確認された後に、アリゲーターを捕獲して調べたところ60%のオスのペニスが異常なほどに萎縮していました。 6.1992年、デンマーク、コペンハーゲン大学の生殖生物学の研究者によると精子数の激減と精子の奇形が年々増加していたということです。また、1940年代〜1980年代にかけ、精巣ガンの発生率が3倍増になっていました。さらに、米国や西欧諸国等の調査データから、成人男性の平均精子数は、1938年〜1990年にかけ半減しており、また、精巣の下降不全(停留精巣)や尿管萎縮といった生殖器異常が、若年層でうなぎ登りに増加していました。この様な短期間に精子の質と量が変化し、生殖器異常が激増する背景は、遺伝子要因によるものではなく、何らかの環境要因にあると考えられます。 このほかにも、たくさんの事実がありますが、これらの事実は、化学汚染が絡んでいることらしいことはわかっていたものの、1980年代後半になるまで、化学汚染という共通項で検討しようとする研究者は現れなかったのです。 現段階の検出法では検出できないほどの、極微量の合成化学物質であっても、生物に大きな影響を与える可能性がある、ということに恐ろしさを感じますが、いかがでしょうか。 では、次回まで、楽しくお過ごし下さい。(^‐^) |