■第3号 ヒトを対象にした研究 (2006年02月06日) 前回のさまざまな事例は、ホルモン作用が攪乱された結果ではないかと考えると、合成化学物質に汚染された地域とそうでない地域の野生生物の生殖問題(子孫を残すという点も含めて)の違いが見えてきました。そして、ヒトを対象にした研究においても野生生物の研究と同じ結果が出たのです。 ヒトについていえば、それまでの研究は、合成化学物質が成人のガンに影響しているのではないか、という観点に偏りすぎていたようなのです。そして、一つの研究は、化学汚染物質が、子どもの発育に影響を及ぼすことを示しました。 五大湖(北米、合成化学物質汚染地域と考えられる)の魚を月に2、3度の割合で食べていた母親から生まれた子どもは、そうでない母親から生まれた子どもに比べ、早産で、体重も軽く、頭も小さかったのです。また、へその緒を流れる血液に含まれるPCB濃度が高い子どもほど、神経系の発育度合いを調べる検査の成績が悪くなるという傾向も見られ、短期記憶をはじめとするさまざまな点で劣っていたのです。 野生生物の組織を分析すると、汚染被害が出ている個体から同じ化学物質が検出されました。その化学物質とは、DDT、ジエルドリン、クロルダン、リンダン、PCBなどで、分析方法が確立され、低コストで分析できたからなのかもしれません。しかし、同じ化学物質が、ヒトの血液、脂肪からも検出されており、特に、汚染物質がヒトの母乳に含まれている脂肪に濃縮されていたという事実は、ショッキングです。 更にショッキングなことは、健康上の問題が現れたのが、主に野生生物の子どもであって、親にはこれといった異常が見られなかったことなのです。つまり、親の体内から検出された化学物質が有害であれば、それは世代を超えて「有毒の遺産」として、胎児や産まれたばかりの子どもに被害を及ぼすということなのです。 前号の事例も含め、野生生物から検出された有毒の遺産、つまり、化学物質は、生体機能の要といえる、生理プロセスを司る内分泌系に作用することから、「環境ホルモン」とも呼ばれるようになったのです。 では、次回まで、楽しくお過ごし下さい。(^‐^) |