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奪われし未来

■第4号 DES (2006年02月13日)
前号で、合成化学物質がホルモン作用を攪乱する、と説明しました。では、なぜ合成化学物質が、そのような働きをするのでしょうか。
実は、ホルモンというのは、人が成長し、健康に生活していくために絶対に必要な、人が造り出す“化学物質”なのです。ですから、ホルモンと似たような働きをする合成化学物質が体内に入ると、あたかもホルモンであるかのように働くために、体の正常な働きが攪乱されてしまうのです。
しかも、ホルモンの働きは、遺伝子の入れ替えや変異とは無関係であるにもかかわらず、かなり厳密な分析方法でなければ測定できないほどの低濃度であっても、作用するのです。1兆分の1という単位の低濃度で、作用するのです。
生体機能が正常に機能するには、適量のホルモンが、しかるべき時期、しかるべき部位に送り届けられなければなりません。そうでなければ、発育は後々まで影響を受けることになるのです。
次に、医学史上で二大惨事といわれる事件について、述べていきます。そのうちの一つは、DES(ジエスチルスチルベストロール)という合成エストロゲンにまつわる話です。前述したように、適量のエストロゲンは、発育を促すことになるのですが、過剰なエストロゲンを与えると生体を大混乱に陥れてしまう可能性があるということを、図らずも証明しているのです。
1938年頃、流産や早産が誘発されるのはエストロゲン・レベルが不十分なために起こると考えられており、当時合成に成功されたDESは、流産の予防薬として処方されました。その後、快適な妊娠期を保障する妊婦必携薬として処方されるほか、出産後の母乳料の抑制、皮膚紅潮をはじめとする更年期障害の軽減、にきび、前立腺ガン、幼児性淋病の治療等々に使われました。
また、畜産農家では、ニワトリや雌ウシを急激に太らせるために飼料に混入しました。このように、生命そのものを意のままに操る武器として、DESを使用したのです。
そして、DES合成に成功した約25年後の1962年に、いまでも生々しく記憶に残っている、サリドマイドの惨事が明らかになり、更にその10年後、DESに関する衝撃的な事実が判明するのです。
サリドマイドは、精神安定剤ないしはつわりを抑える薬として、妊婦が服用していました。それが原因で、46カ国で8,000人にも上る赤ん坊が、重篤な奇形を伴って産まれてきたのです。サリドマイドを服用していたにもかかわらず、運よく被害を免れた子どももいました。その原因は、母胎が服用していたサリドマイドの量ではなく、服用していた時期に関係していたのです。つまり、胎児の四肢成長に重要な、妊娠5週目から8週目での服用が、奇形を生じさせたようなのです。そして、この時期は、発育を阻害する化学物質の研究が進むにつれ、ことあるごとに裏付けられていくのです。
一方、DESについていえば、流産の予防薬として処方されていたにもかかわらず、流産予防に何の効果ももたらしませんでした。
DESの害については、かなり詳細に書かれていますので、次回改めて概略をお話しします。では、次回まで、楽しくお過ごし下さい。(^‐^)

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