■第6号 有毒化学物質による被害 (2006年02月27日) これまでお話ししてきたような、合成化学物質がホルモン作用を攪乱するという事実が認知される以前は、有毒化学物質による被害というのは、 1 毒物と同様に細胞の損傷あるいは細胞死を誘発し、それに曝された生物は病気になるか死んでしまうこと 2 DNAを攻撃して、発ガン性物質のように遺伝子変異を際限なく生み出し、ガンが誘発されること 以上の2点にありました。 このような発想からは、ガンのような病気が誘発されない限り、その合成化学物質は有害ではないということになります。そして、内分泌系の作用の攪乱という観点は見落とされることになるのです。 ホルモン作用攪乱物質は、環境でごく普通に検出される程度では、細胞死を引き起こすこともなく、また、DNAを傷つけることもありません。人体には、低レベルの汚染には耐性があるのです。 しかし、人体は、DNAについた傷を修復する力があったとしても、化学物質によるホルモン作用の攪乱に対する修復機能は持ち合わせてはいません。それは、元々細胞が、ホルモンメッセージを受け入れるようにできていて、本来のホルモンを取り込むのと同様に、取り込んでしまうのです。 また、前号までにも書いてきたように、合成化学物質の暴露による害は、成人では、影響が出ないような低レベルであっても、胎児のある成長期には、致命的な打撃を与えることになります。しかも、その害は、3世代にわたって調べる必要がある、厄介なものなのです。ですから、今年1月に環境省が、【人が食事などから日常的に摂取している量では心配する必要はない】という理由で、環境ホルモン(内分泌かく乱物質)の疑いがある67物資のリストを2005年春に廃止したということが、正しかったのかどうか疑問に感じるところです。 『奪われし未来』では、ガンは劇的な病であり、患者本人、家族が痛手を被るけれども、種全体にとっての致命的な脅威ではないと述べています。それは、ガンというのは個人や家族にとっては悲劇であることに違いはないのですが、人類の存続を不可能にするというものではない。 それに比べて、ホルモン作用攪乱物質は、生殖能力や発育を知らず知らずのうちに蝕み、影響の及ぶ範囲も広いが故に、種全体を危機に陥れるおそれがあるというのです。 精子数の研究がなされ、減少していることが報告されています。その原因は、合成化学物質であったり、電磁波障害によるものであったりと、いくつかの要因が考えられますが、確実に、人類全体に影響を及ぼしているように思われます。 少子化減少は、あながち、晩婚や一人っ子の問題だけではないかもしれません。その奥には、合成化学物質や電磁波の問題が潜んでいるのかもしれません。 (注)食品添加物の中にも、実際にガンを誘発するような物質もあります。ですから、そういうものに暴露されないようにすることも、もちろん必要なことです。ただ、あまりにも、ガンに注意が向きすぎると、ホルモン作用攪乱物質が見落とされることになるのではないかということで警鐘を鳴らしているのだと思います。 では、次回まで、楽しくお過ごし下さい。(^‐^) |